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21世紀を<平和の世紀>に! 02−03
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<21世紀を平和の世紀に!>掲示板
テロと報復     資料集(3)
「テロリズムに対する報復が人権を踏みにじる」
ウィリアム・A.・シャバス
               アイルランド人権センター
               アイルランド、ゴールウェイ
               
 ブッシュ米大統領やブレア英首相らは、9月11日のテロリストの行為は、民主主義への攻撃と考えて当然と主張した。が、これにより脅かされたのは、民主主義ではなかった。民主主義体制は、はるかにきびしいところを生き延びてきた。民主主義を滅ぼすのは、テロリズムに対する反動行為である。

 近代民主主義は、テロリストを処罰するに完ぺきな司法制度を備えている。この制度により、わたしたちは、かれらを見つけだし、捕らえ、裁判にかけ、至当な刑罰を課す。

 ロッカビー飛行機墜落事件、ナイロビ(ケニア)とダル・エス・サラーム(タンザニア)の大使館爆破事件の犯人たちに対し、アメリカ・イギリス政府はこのとおりの手順をもって対処した。(ロッカビー飛行機墜落事件とは、88年、スコットランドのロッカビーで、PAN AM機が爆破され墜落した事件。2人のリビア人が犯人とされた) 

 また、これは、国連が、前ユーゴスラビアとルワンダにおける大量虐殺と人道に対する罪で告発されている人々に対し、行っていることでもある。

 ミロシェビッチが国際法廷で裁かれるのと、巡航ミサイルで殺されるのと、どちらがまっとうといえるであろうか。ロッカビーの被告人2人についていうと、うち一人は、今年初め、スコットランドの判事により、無罪とされた。裁判において暗殺と即刻の処刑を主張する側が勝っていたら、テロリズムに対する民主主義の戦いの名のもとに罪なき人が殺されていたであろう。

 アメリカの政治家の中には、9月11日の事件は”戦争行為”であるとして、 刑事裁判は不適当であると主張しているものがいる。しかし、国際法にてらしていうと、まず、実行した「国家」が明らかにされなければならない。個人が構成する集団が、たとえ構成員が多数であっても、”戦争行為”を行うということはありえない。

 テロリストをかくまっている者たちについては、”戦争行為”における共犯者といいうるのではないか。しかし、もっとも近いところでこの大胆にも粗雑な主張がなされたときのことを思い出してみよう。1914年、セルビアのナショナリストがオーストリア皇太子を暗殺したとして、オーストリア・ハンガリーが、セルビアに宣戦布告したときのことである。これによって、NATO条約第5条に相当する当時の条項を根拠とする宣戦布告が待っていたかのように次々と堰をきって発せられた。

 応報の名において行われたテロリズムに対する過剰対応が、いかにしてヨーロッパの青年層まるごと一世代を殺りくしさった一連の歴史的事件を引き起こしたかを振り返ると、わたしたちは戦慄と驚きに捕らえられる。

 犠牲者とその家族の怒りと報復の念は、十分理解できる。しかし、市民を巻き込み、民間の施設を標的とする報復行為はいかなるものも、はっきりと国際法により禁じられている。これは戦争犯罪である。かりに報復が許容されるとして、それは、軍事施設のみを目標とする場合に限る。

 アメリカは、このたびの悲劇の数千の罪なき犠牲者に対する同情を得ようとし、現にそれを得た。遺族の苦しみを見るとき、人々に親しまれたビル群の一角が欠落しているのを見るとき、わたしたちの心は乱される。しかし、犯人を捕まえることにも、起こり得る戦争犯罪を防止することにもならないアメリカの政治プログラムを進めるための、国際的連帯となってはならない。

 さらに、民主主義を守るという旗のもとに策が講じられるなら、けっしてダブルスタンダードがあってはならない。ほんの2年前、現在とは違う状況下でだが、アメリカは、ベオグラードのある民間ビルを、中にテレビ局が入っているという理由で軍事目標であると主張した。アメリカは、この攻撃の犠牲となった民間会社の事務職員たちの死を”付随的被害”といって正当化した。

 もし、ワールド・トレード・センターを攻撃した犯人たちが裁判にかけられたなら、この先例を引き合いにだせばよい。ベオグラードにおける殺りくの規模は異なるものの、論理はほとんど同じである。

 何度であろうが、繰り返して言う。民間人はいかなる紛争においても犠牲とされてはならない。生きる権利は、数ある人権のうちでもっとも基本的なものである。ニューヨークとワシントンの罪なき数千の民間の人々の生きる権利は、踏みにじられた。しかし、ベオグラード、バグダッド、カブールの人々もまったく同じ権利をもつ。それには何の例外もない。

(筆者は、国際人権法とそのカナダ憲章の作成にあたった。また、パレスチナ占領地域へのイスラエルの植民を国際法に照らして違法とするすぐれた論考がある)
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★米国のテロ報復戦争の愚★
青山貞一  Version 1.2 2001.9.26

★はじめに

 私がWTC事件を知ったのは、韓国の慶州で国際学会に9月9日から参加している最中だった。コンコルドホテルの自室でたまたまNHK-BS2による全米ネットワークABCを見ていたら、NYCのWTCビルからもくもくと煙がでていた。その直後第二の航空機がもうひとつのビルに突入し炎上した。

 国際学会が開かれたのは現代ホテル(ヒュンダイ)だが、そこには米国環境保護庁(EPA)の幹部職員はじめ欧米の著名なダイオキシン研究者が集まっていた。会議場の入り口に掲揚されていた国旗はいずれも半旗となった。また友人のカナダから来ていた研究者を含め学会が14日に終了した後も、北米への帰国が足止めとなった。

 11日以降,韓国で見たの米英系テレビ、すなわちABC,CNN,BBCそれにNHK-BS2は一日中、WTC事件一色となった。画面にはWTCビルの炎上、崩壊が何10回、いやおそらく何100と映し出され、ブッシュ大統領が報復戦争について言明し出していた。

 わたくしは妻の親類が貧しい東北の地から大正後期にカリフォルニアに渡りその後米国のシカゴ、カリフォルニアなど西海岸各地、ハワイのホノルルなどに散在して居住している。また米軍にもNYCにもDCにも多数の友人がいる。その意味でけっしても他人事ではない。にもかかわらず、これから起ころうと
しているブッシュ政権を軸とした報復戦争は「21世紀の新たな戦争」とか、「正義の闘い」と言った、いわばテロ報復戦争を正当化する口実とは別に、きわめて危険な重要な他の側面もあることを、見過ごしてはならないと思う。

★米国のアフガン報復戦争の行方

 米国のブッシュ政権は、はWTCやワシントンDCのペンタゴンに航空機を突っ込ませ炎上、崩壊させた自爆テロにいち早く、これは「戦争である」と言明した。さらに「報復戦争」を宣言した。これをきっかけとして、今後ブッシュ政権は自爆テロの背後にいると見なされるビンランディンをかくまうアフガン地域全体の制圧に乗り出す可能性が高い。この場合、どう見てもブッシュ政権が「ビンラディン」の首をとるだけで、米国が引き下がる可能性は低い。ブッシュ大統領自身が言明しているように、今回の報復戦争は長期戦となるだろう。

 アフガンへのテロ報復戦争では、米国は当初戦闘機や巡航ミサイル(トマホーク)を使った空爆からはじまる可能性もある。しかしブッシュ政権の報復戦争の戦術につき,グル元パキスタン軍情報機関の長官は,9月24日の毎日新聞朝刊で次のように言明している。これは毎日新聞記者のインタビューに直接応えたものである。

 「アフガンには壊すべき道路も橋も軍事施設もない。身を潜めた兵士に最新
  鋭のステルス爆撃機も通用しない。逆に米軍は(アフガン戦争で米国が供
  与した)対空ミサイルで撃墜され,市民を闇雲に殺傷するだけの結果にな
  る」(「米はソ連の二の舞になる」毎日新聞2001.9.24朝刊)
 
 ではブッシュ政権が地上軍をアフガンに投入した場合どうなるのか。これに対しグル氏は

 「米国が地上軍を投入すれば、タリバンはすぐに駆逐され、アフガニスタン
  のカブールに米国の傀儡政権が樹立されるだろう。しかし、本当の戦争は
  それからだ。タリバンはゲリラ戦で通信、軍事施設を破壊し、新政権の統
  治は点だけで面にはならず、内戦状態が終息することはない」

と断言している。さらにグル氏は、

 「その後、戦争が泥沼化し市民の犠牲者が増えれば、国際社会で反米感情が
  一層高まり、新たな対米テロも誘発することになる」

と警告している。百戦錬磨のグル氏の推察は欧米の机上の軍事評論家とは明らかに違うと思えた。

★ブッシュ政権のもうひとつのアフガン戦略(石油権益) 

 米国の中東戦略の「目玉」はいつの時代も石油利権にあると言われている。
 過去の中東戦争、とくに湾岸戦争はその重大例だ。湾岸戦争はあたかも米国のブッシュ政権(現大統領の父親)を軸とした多国籍軍によるクウェートに武力侵攻した「無法者」で「ならず者」国家イラクへの報復戦争,正義の闘いとされていた。だが、この「正義の闘い」も間違いなく米国系メジャー(石油資本)の権益確保にあることも推察できる。

 1991年の湾岸戦争は言うまでもなく,現ブッシュ大統領の父親が米国大統領だったときに起こした戦争である。ブッシュ親子がテキサス出身であり米国系石油資本との関係があることは世界的によく知られている。現ブッシュ大統領がCOP6の地球温暖化政策で,非常に後ろ向きな対応しか示さないのも
石油資本との関連があるからだ,という認識が米国だけでなく欧州、日本のNGOにもある。

 ところでビンラディンが米国を敵視する最大の理由は何か。
 サウジの大富豪の二男として生まれたビンラディンが反米色を濃くしたのは、祖国サウディアラビアに湾岸戦争(1991年)終結後も米軍基地を残したことにあると言われている。米軍のサウジ残留は,おそらくイラク軍監視を名目としているが、今後中東で紛争が起こったときに湾岸諸国、湾岸地域の欧米の
石油権益保護の軍事的拠点を用意することを眼目としていることは間違いがないところだろう。

 タリバンなどアフガン情勢に詳しい静岡県立大学の宮田助教授がNHKの生番組ではからずも次のことを話されていた。宮田教授の話しを総合すると次のようになる。

   長年にわたるソ連とアフガン戦争の終結後、米国は旧ソ連を構成するア
  フガン北部の地域で採掘される大規模油田からの原油をアフガン北部そし
  てパキスタンを経由しインド洋の港湾に輸送する一大プロジェクトを進め
  てきた。冷戦時,反ソでアフガン側に大規模武器を援助したのは米国だ。
  しかしアフガンが旧ソ連に勝利した後,米国は過激イスラム原理主義者の
  あつまりであるタリバンがアフガン国土の90%を支配するとは思ってい
  なかった。そのタリバンは反米色を強くもち、米国によるサウジ駐留以降、
  残留に反発するサウジ最大のゼネコン会社社長の息子ビンラディンとの連
  携を深めていった。この経緯のなかで米国の旧ソ連地域からインド洋への
  原油輸送プロジェクトが思うように行かなくなってきた。今後ともアフガ
  ン、パキスタンなどがタリバンとビンラディンの影響力下にあるとすると
  インド洋側への米国系メジャーの原油搬出が永遠に困難となる。

 クウェートへのイラク軍侵攻のときもそうだったが、米国,とくに父親のブッシュ政権が当該地域への軍事侵攻にこだわる理由のひとつは、報復的軍事侵攻以外に,アフガン北部地域にある旧ソ連の.....タンと名がつくイスラム系CIS共和国が高品質の油井をたくさんもっていることあると考えられる。実際、世界の資源エネルギー地図を見れば分かるが,旧ソ連関連共和国では、バクーなどカスピ海沿岸地域の油田が有名だが、サマルカンド、タシケントの近くにも多数の井マーク、つまり油井のマークがある。サマルカンドの南部はアフガンに接している。

 アフガン問題と石油問題については、23日夜,日本のテレビで松波衆議院議員(保守党)も言及していた。彼は数少ないアフガニスタンに詳しい日本人である。

 ブッシュ政権がしつようにアフガン侵攻にこだわる理由は,もちろんWTCテロ襲撃事件などテロへの報復にあることは言をまたないが,この機に乗じ石油利権を確保する、それも先に書いたカブールに米国傀儡政権を樹立しつつその権益を確保する可能性もけっして否定できないと思える。

★石油会社社長ブッシュ大統領の家とオサマ家は因縁があった?

 9月25日の朝日新聞夕刊に、わたくしが「米国のテロ報復戦争の愚(2)」に書いた論考を裏付ける興味深い記事がでた。世界が喪に服しているさ中信じられない内容の記事である。

 「ビンラディン家・ブッシュ家に因縁」と言うタイトルです。両家はもともと石油ビジネスでつながっていたというのですからこれはもう驚きというかブラックジョーク以外のなにものでもない。内容の詳細は新聞記事を読んでいただくとして、現在のブッシュ大統領が設立した石油会社(アルブスト・エネルギー社)にビンラディンのオサマ家の長兄が出資していたというのだ(当初、米英紙が報道)。

 こうなるとますます今回のアフガンへのブッシュ政権のテロ報復戦争は、アフガン背後地域にある油田,石油の権益保護、利権獲得と無縁ではなさそうだ。

 もしアフガンのカブールにブッシュ政権の傀儡政権ができ,旧ソ連の...タンとつくイスラム共和国からアフガン北部同盟を経由しパキスタンの原油輸送ルートができれば、石油会社社長、ブッシュ大統領は、一挙両得となるだろう。WTC事件は間違いなく痛ましい事件であり,亡くなられた方々にはご冥福をお祈りする。しかし、このような「事実」に接するに及んで、それでも世界市民がテロ報復戦争を支持などできるものだろうか? 大いに疑問を感ぜざるをえない。

 一方、旧ソ連、現CISのプーチン大統領は、アフガン戦争以降ずっと手を焼いてきたチェチェン共和国のゲリラに対し、欧米諸国の援助のもとで、堂々と彼らをイスラム過激派、そしてテロ呼ばわりし、今後やはり報復戦争をしかけようとし欧米諸国に根回しをはじめた。もしそうなればチェチェンはひとたまりもなく駆逐されるだろう。

 こうみてくると、米、旧ソ連超大国の真の戦略が見えてくる。
 イスラム過激派そして大規模テロ根絶のなにもとに、自分たちの権益や立場を強固にし、経済的にも利権を分配すると言う、おぞましい過去の帝国主義の歴史を21世紀に繰り返すことになりかねないからだ。ブッシュや軍事評論家は、21世紀の新たな戦争などと言っている。だが、現実は相も変わらず米国
やCISの両超大国の軍事政治的さらに経済的な世界支配が展開されていると我々は認識すべきかも知れない。

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最後は、ベトナム戦争から最近はグローバリゼーションの問題まで、深い洞察を著作やドキュメンタリーフィルムに記すなど、「不正を追求するジャーナリスト兼作家」と呼ばれるジョン・ピルガー氏の事件直後の記事です。
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「信じがたい事態の必然性」
ジョン・ピルガー
                         
 今回のアメリカへのテロ攻撃がイスラム世界によるものなら、あまり驚くには値しない。

 事件の二日前、イラク南部でアメリカとイギリスの戦闘機が非軍事地帯を爆撃し、8人の民間人が死んでいる。私の知るかぎりでは、イギリスのマスコミは、この事件について一言も触れてはいない。

 ロンドンの保健教育トラストによると、「湾岸戦争」の名でよばれる大虐殺で死亡したイラク人の犠牲者の数は、約20万人にのぼる。しかし、このニュースが西側諸国の良心に触れることはなかった。

 アメリカとイギリスによって課せられた古めかしい経済制裁の結果として、イラクでは少なくとも100万人の一般市民が死亡している。そのうちの半数は子どもである。

 狂信的なタリバン派の母体となったパキスタンとアフガニスタンのムジャヒディンは、主にCIAによって創り出された。今、アメリカ最大の「おたずね者」であるオサマ・ビン・ラディンがテロ攻撃を計画したとされるのテロリスト養成キャンプは、アメリカの資金と後援によって設立された。パレスチナでのイスラエ
ルによる不法な占領は、アメリカの支援がなければ当の昔に崩壊していただろう。

 イスラムの人々は、"世界のテロリスト"からは程遠い。イスラム世界の人々は、主にアメリカ原理主義によるテロの犠牲者である。軍事、戦略、経済などのあらゆる形態のアメリカの権力こそが、地球上のテロリズムの最大の源なのだ。

 この事実は、西側のメディアからは検閲により削除されている。マスコミは、せいぜい帝国主義権力の非難すべき行いを最小限に見積もって伝えるに過ぎない。

 プリンストン大学で国際関係論を教えるリチャード・フォーク教授は、「西側諸国の外交政策は、西欧的なよい価値観や無罪潔白さが脅かされているという、独善的で一方的な法的・倫理的な形でしか提示されていない。それは、好き放題の政治的暴力を正当化するものである」と述べている。

 ト二ー・ブレアの政府は、イスラエルに殺人兵器を売り、イラクとユーゴスラビアに集束爆弾をまきちらし、ウラニウムを大量投下で使い果たし、インドネシアでの大量殺戮への最大の武器供給者だった。そのブレア首相が今回の事件に関して、「大規模テロをおこなう新しい悪」を「恥じ」と言及し、世論に真剣に受けとめられうるという事態を見れば、我々の集合的な世界観がどのような検閲を受けているのかがよくわかる。

 まったく、ブレアのお気に入りのフレーズのひとつの「ばかげている」という言葉が浮かんでくる。しかし、あまりにも凄惨な死をとげた数千人のアメリカ一般市民の遺族にとって、この苦しみをもたらした犯人が西側諸国の政策の産物かもしれないということは、なんら慰めにもなりはしない! アメリカの権力機構は、自ら、あるいは罪のない自国民が犠牲を払うことなしに、中東での事件に資金を提供し、操作できると信じていたのだろうか。

 9月11日のテロ攻撃は、アラブ・イスラム圏の人々が裏切られ続けた長い歴史の果てに起きた。オスマントルコ帝国の崩壊、イスラエルの建国、第一次〜第四次中東戦争、そして34年にわたるイスラエルによるアラブ国家の残虐な占領。こうした歴史のすべてが、「西側諸国の祖国への介入による犠牲者の代表」を名乗る者による11日火曜日のすさまじい残虐事件によって、短時間の間に跡形もなく消え去ってしまったようだ。

 「アメリカは近代戦による自国の被害を体験していなかったが今、2万人に及ぶかもしれない犠牲者の数を得た。」ロバート・フィスク教授が指摘するように、中東の人々は罪なき人々の死を悲しむだろう。しかし同時に、西側の新聞やテレビは、今回の報道のほんのわずかな量でも、これまでにイラクで50万人の子どもたちが死亡していることや、1982年のイスラエルのレバノン侵攻で1万7500人の民間人が死亡したことを報道しているか? と問いかけるだろう。答えはノーだ。アメリカで起きた残虐なテロ行為には深い根っこが存在し、今回の事態はほぼ必然的に起きたとも言えよう。

 原因は、中東と南アジアの怒りと悲嘆だけではない。冷戦終結以降、アメリカとその主要な共犯国であるイギリスは、その富と権力をこれみよがしに行使し、濫用した。その間、アメリカやイギリスは、かつてない規模で人類の分断を押しつけ、その手先は増え続けた。

 現在、10億人に満たないエリート集団が、全世界の富の80%を使っている。「自由貿易」「自由市場」と婉曲表現されるこの力と特権を守るために、計り知れない不公正が行われている。

 それは、キューバの違法封鎖に始まり、主にアメリカが牛耳る殺戮兵器の取り引きから、基本的な環境問題に対する良識の欠如、アメリカ財務省とヨーロッパ中央銀行の代理人に等しいWTOのような機構による経済的弱者への攻撃、世界銀行やIMFによる最貧国への支払い不可能な債務の返済の強制、コロンビアの新たな「アメリカのベトナム」化、北朝鮮の「ならず者国家」としての地位を確保するための南北対話のボイコット等におよぶ。

 西側のテロは、帝国主義(報道関係者が表現する勇気を持ちあわせない言葉だが)のごく最近の歴史のひとこまだ。イギリスのウィルソン政権が1960年代にディエゴ・ダルシャの人々を追放したことは、ほとんど報道されなかった。彼らの母国であったこの土地は現在、アメリカの核兵器の臨時集積場と基地とを兼ね、米軍爆撃機が中東パトロールを行う拠点となっている。

 1965〜6年のインドネシアでは、アメリカ政府とイギリス政府の共犯行為によって、100万人が殺されている。アメリカはスハルト将軍に暗殺リストを渡し、暗殺予定者が殺されるたびにリストの名前を消していった。

 BBCの東南アジア特派員だったローランド・チャリスは、「世界銀行とイギリス企業を当地に再び置くことが取り引きの一部だった。」と語っている。イギリスがマライ半島で行なったことは、アメリカがベトナムでしたことと変わらないどころか、むしろ感化を与えたと言える。食糧供給を停止し、村落は強制収容所
と化し、50万人の人々の財産を強制的に没収した。

 ベトナムで、財産を没収し、全土を痛めつけ、枯れ葉剤で汚染した行為は、ヨハネ黙示録のこの世の終末に等しい。にもかかわらず、ハリウッド映画やエドワート・セッドが正に「文化的帝国主義」と呼ぶもののおかげで、我々の記憶のなかで矮小化されていく。

べトナムでの「フェニックス作戦」で、CIAは5万人の殺戮を企てた。現在、公式文書が明らかにするところによると、このフェニックス作戦は、民主的に選ばれた指導者サルバド−ル・アレンデの殺害でそのピークに達したチリでのテロ行動や、さらに10年後のニカラグアでの弾圧のモデルとなっていたのである。

 これらは全て法に反した行為であり、このような事例は多すぎてとても書ききれない。今や、帝国主義は復興の最中にある。米軍は、現在50カ国の基地で、罰則を受けることなく軍事行動を行なっている。

 ワシントンは、「全領域の支配」が目的であると明言しているし、アメリカ空軍関係の文書を読んでも明らかだ。イギリスでは、貪欲なブレア政権が、「イギリスの国益追求」のために平和維持活動の衣を着せた4つの危険な行動に乗り出した。これらの行為は、国際法上の根拠はほとんどないに等しい。過去50年間のイギリス政府に前例のない行為である。

 これが、11日にアメリカで起きたテロとどう関係するだろう。世界の大半を占める貧困地域を訪れたら、全てが関係していることが解るだろう。民衆は愚かでも、静止したままでもない。彼らは、自分たちの自治を危うくされ、自分たちの土地と資源と子どもたちの命が奪われているのを見ている。その責任追及の矛先は、特権と略奪を欲しいままにする北の国々へ向けられる。テロが更なるテロと狂信を呼ぶことは避けられない。

 しかし、抑圧された人々の何と忍耐強かったことか。イスラム原理主義グループが、イスラエルやニューヨークでの自爆を覚悟して結成されたのはわずか数年前のことで、アメリカとイスラエルがパレスチナ国家設立の望みと、帝国主義によって傷つけられた人々への正義を完全に否定した後のことである。

 遠く離れた彼らの怒りの声が、今届いた。残虐行為の行われる遠い地での日々の恐怖が、ついに、その生まれた場所へ戻ってきたのだ。
 
                   (翻訳:黒田真理子、監修:枝廣淳子)
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第二次世界大戦後に、アメリカが爆撃を行った国
中国 1945-46
朝鮮 1950-53
中国 1950-53
グアテマラ 1954
インドネシア 1958
キューバ 1959-60
グアテマラ 1960
コンゴ 1964
ペルー 1965
ラオス 1964-73
ベトナム 1961-73
カンボジア 1969-70
グアテマラ 1967-69
グラナダ 1983
リビア 1986
エルサルバドル 1980年代
ニカラグア 1980年代
パナマ 1989
イラク 1991-99
スーダン 1998
アフガニスタン 1998
ユーゴスラビア 1999


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                                 No. 573 (2001.10.04)  より             


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