「人の中にも自分と同じ闇があることを知った」

　人それぞれ、それぞれの闇を持ち、人それぞれ、それぞれの喜びを持ち・・・闇も喜びも理解し合え、共有し合えるに違いないことなのだけれど、理解と共有に至る道は険しく、遠い。心は幾層もの、幾層もの事実と感情の蓄積でできていて、どの層にどの心が隠されてるのか探し出すのはとても難しい。けれど、心のもっと深いところまで降りていくと、大地の深くにある地下水のように心の源泉があり、その源泉まだ遡ればあなたと私は重なっていることを知ることができる。あるいは溶け合っていることを知ることができる。そんな人との出会いは、求めれば、身近にいくらでもあるのだ。自分自身が自分自身の心の深くへ降りていけば、その生き様を素直に表現し、伝えれば、重なるものは重なり、共鳴するものは共鳴する。自分の心の深いところでの出会い直しが、新しい自分に気づき、人の中にも新しい人を見つけ出すことができ、相互に学び合い、サポートしあって、一緒に新しい人への道を歩いていけるようになるのだ。鈴音さんの『ゼロになるまでの旅路』はそんな新しい人への旅路なのだ。新しい人の方へ行くには人は現実という拘束と制約の中であまりにも多くのものを背負い込まされることになる。外部によって形成されてきた自我意識を点検し直して、素直で自由な心を拘束しているバリアを破壊あるいは溶解させていく自問自闘は茨の道なのだ。おそらく鈴音さんが「闇」と呼んでいるものは鈴音さん自身の自我意識との格闘であるだろう。闇はその内部にいればどこまでも深い闇だけれど、その外部に立てば全体の中の一つの部分であることを知ることができる。外部に立つということは、未来のセルフイメージを確かなものにして、そのセルフイメージの自己実現を生き始めるということである。茨の道の彼方には必ずや未来が開かれる。それを信じることのできる出会いを鈴音さんは自己表現活動を通して獲得することができた。奇跡的と言えば奇跡的だが、当たり前と言えば当たり前だ。求めるものは与えられる。出会いたいものには出会える。『自分を探してきた旅の記録』は「きっと必要な時に必要とする人に出会うのだと信じて」書かれはじめた。鈴音さんの未来が幻視されているのだろう。

　けれど、まず、人は、自分自身の心の辺境へ降りていかなければならない。自分自身の源泉まで降りていかなければならない。一人では苦しい。一人では見えない。同行二人・・・。鈴音さんはそんな友達に巡り会えたのだった。そして未来を見せてくれる木乃実さんに出会えたのだった。

 　とうとう木乃実さんは　イエスキリストのヴィジョン　を見てしまいました。

　鈴音さんは鈴音さんのヴィジョンをゆっくりとゆっくりと紡ぎ出していきます。

　二つの魂が響きあって、風となって歌い、光となって踊る時空が創りだされていくでしょう・・・。 
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